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日志


7月15日

おもいだすこと 1

      
       わたしが留学に来たのは秋口だった。
 
   それから3ヶ月いや、4ヶ月経ったころだろうか。
 
   すでに冬の冷たい風が吹いていたのは確かだ。
 
   大学の正門前の大きなT字路(というか交差点といいたいくらいだ、、)の一角に
 
   6平米にも満たないと思われる小さな店が現れた。
 
   店の名前も看板もない。
 
   わたしがはじめてその店を目にしたのは
 
   冷たい冬の風が吹くある日、すでに日も暮れて暗い街灯が灯り始めた時刻だった。
 
   通りの向こう、薄暗い闇の中で その店はひときわパステルピンク色に目立っていたのだ。
 
   大学前に看板もないパステルピンクの店・・・・。
 
   ・・・・・・・・。
 
   健全なほうに想像するなら、ファンシーショップ。・・・・・しかし当時そんな店は杭州中探しても少なかったように思うが、、
 
   反対方向に想像するなら、夜の・・・・だ。・・・・・しかしここは大学前だ、、
 
   
   
   通りを渡ってそのパステルピンクの中をのぞくと、
 
   パステルピンクの木製テーブルにパステルピンクの木製のいすが3セットぐらい並べられていた。
 
   壁にも一面パステルピンクのタイル。
 
 
   
   わからん。
 
   ・・と思って、大学のほうへ踝を返そうとしたときだった。
 
   “何食べるんだい?(要吃什么?)”
 
   このパステルピンクにまったく似合わない小太りのおじさんが奥から現れた。
 
   はぁ?
 
   一瞬面食らって、おじさんと見つめ合う形になってしまった。
 
 
 
   “ここ何食べるんですか?(这里吃什么?)”
 
   なんだかへんてこりんなやり取り。
 
   “面条(ミエンティアオ~=麺)、馄饨(フントゥゥン~=ワンタン)、炒饭(チャオファァン~)!!”
 
   おじさんはニコニコ笑いながら、手書きのメニューを出して見せてくれた。
 
   わたしはメニューを見ながら、でも“麺屋”にそぐわない店内一面のパステルピンクが気になっていた。
 
   “まだね、試験営業だけどね、あんた留学生かい? そう。これからも来てね。友達連れてきてね、、”
 
   ・・・・このパステルピンクはおじさんが選んだ色なのかな、、、
   ・・・・どうしてピンクなんだ、、、
   ・・・・まるでトイレかバスルームだ。。
 
 
 
   味はおいしかった。
 
   老板(店の主人)もニコニコと愛想のいいよい人だった。
 
   でも。。
 
   なぜこの色。。。。。
 
 
 
 
 
 
   “昼ごはん食べに行こう!”
   “どこ行く?”
   “今日は ピンクルームでどう?”
 
   1ヶ月と経たないうちに、その店は私たち留学生の間でピンクルームと呼ばれるようになっていた。
 
   毎日昼時、夕食時、学生であふれかえっていた。。狭いからあたりまえといえばそれまでだが。。
                           
    わたしも何度も足を運んで、おじさんもわたしのお気に入りメニューを覚えてくれた。
 
   そういえば、1度おじさんに尋ねたことがあるかもしれない。
 
   “どうしてピンクなの?”
 
   さてなんと言ってたっけか。
 
   
 
   月日は流れ、今はもうない。
 
   何年前かの道路の拡張工事の際、姿を消した・・らしい。
 
   今思い返してみると、
 
   最後までその店には店の看板がなかったような気がする。
 
   ただ、入り口脇の壁に『麺』という字がかけてあったか、立てかけてあったか。
 
   でも、当時の留学生や中国人学生たちは今でもその店の名前を覚えているだろうな。
 
 
   『ピンクルーム』。
     
   
7月12日

どしゃぶりはひっくりかえるか

     
     
     それはもうおととい(7月10日)のおはなし。
     
     明け方からか降り続いていた雨は朝9時を過ぎて雨脚を増したらしい。
 
     9時半過ぎからの会社派遣授業にと私が学校を出たとき、
 
     雷を伴ったものすごい降りっぷりとなっていた。
 
     もし授業に行くという使命がなければ、ビルの入り口で様子見をするところだったけれど、
 
     そうもいかない。。。数秒もためらうことなく、そのすごい降りっぷりのなかに出た。
 
     あんな雨の中を行くのはなかなかにひさしぶりだった。
 
     サンダルに足、着ている服がぬれるのに30秒もかからなかった。
 
     傘は“いちおう差しておきます”状態。・・・・まあ、髪はどうにか濡れないで済むだろう。
 
     普段から自称“独り言が多い人”のわたしが、こんな状態で何も言わないはずがない。
 
     すぐに独り言が口をついて出た。
 
     「まったくなんて運がいいんだ。どしゃぶりがひっくりかえってきた!」
 
     
     
     さて。
 
     まったく無意識に出たものだけれど、この形容は成立するだろうか?
     それともやっぱりまちがいかな?
     わたしの感覚にはすごくぴったりくるんだけど。。。
 
 
 
     
     **ちなみに・・・普通は激しい雨の様子を“盆を覆したような”とか“バケツをひっくり返したような”と言います。
 
     
7月9日

38度

    
  (これは7月8日のはなし) 
  
    今朝の新聞 一面の見出しを見て知った。
 
    “杭州最高気温38.1度記録!”
 
    つまり、昨日の杭州の気温は38度以上だったということだ。
 
    もちろん、近辺の町では40度を超えたところもあったらしい。
 
    あらまぁ。
 
    確かに暑かった。
 
    でも、その前の日の天気予報のせいで、わたしの頭の中は
 
    36~37度だったのだ。
 
    “暑さはまだまだこれから。。。38~39度が待ってるぞ”
 
    昨日一日そんな気持ちで過ごしたものだから
 
    今朝新聞を見たときは、拍子抜けしてしまった。
 
 
    
    昨日の38度はまさに「知らぬが仏」。
 
    おかげでわたしは“最高に暑い!”なんて感じなくてすんだ。
 
    こりゃぁ、気持ちの持ちよう、マインドコントロールの世界だな・・・・・。
 
    “ここの天気予報は『40度』は絶対言わないんだよ”なんて言われてる。
 
    本当かどうか知らないけど、ある意味一理ありそうだ。
 
    “あしたは40度になるでしょう・・・”。。。聞きたくない。
 
    言わないほうが「知らぬが仏」だ。
 
    ここ数年わたしの記憶の限りで、天気予報が言った一番高い温度は38度。
 
    39度というのもあったかもしれないが、私の記憶からは抹消されている・・・もしかしたらこれも心理作用かもしれないが。
 
    そう。
 
    もし38度と聞いたなら、
 
    “風邪引いて熱出した”なんて考えないで、
 
    “ぬるいお風呂につかるぞぉ”なんて考えておこう。
 
    そのほうが気持ちよさそうだから。
7月6日

にほんごでしりとりをしよう

   
   上の息子は今、日本にいる。
 
   週末1週間に1度インターネットでチャットをしているが
 
   最近なにか、やたらと私としりとりをしたがる。
 
   しりとり。。。中国語では、“接龙”。
 
   日本人なら日本語のしりとりのルールは言うまでもない。
 
   最後に “ん” がつく言葉を言ったら負けである。
 
   問題は、上の子の頭の中は半分中国語ということ。
 
   先週末も、チャットをしていたら、“しりとりをしよう”と誘ってきた。
 
   わたしはそのとき、後に用事を控えていて、
 
   時間を気にしていた。
 
   ・・・・今からしりとりをしたら、時間がなぁ・・・・・
 
   “ママからはじめて!”
 
   “・・・・・・・・。”(はじめるべきか、きょうはやめにするべきか。。。)
 
   “ママ、早くぅ!”
 
   “・・・・・・・・。”(できればはじめたくないなぁ。。。)
 
   “じゃぁ、僕からはじめるよ”
 
   “うっ、うん・・・・・・。”(あちゃぁ、、はじまっちゃうか。。。)
 
   “じゃあねぇ。。うう~ん、「きりん!!」”
 
   “えぇっ?・・・・・・・”
   
 
   いきなり、終わってしまった。。
 
   内心ちょっとほっとしたり。。(ごめんね)
 
 
 
   “レイ君、「きりん」じゃ、もうしりとりおわちゃったよぉ”
 
   “ああああああ!まちがえちゃったぁ!”
 
   
 
   中国語だと、かなりえらそうな語気で話すくせに
 
   日本語で話している限りまだまだほほえましい息子だ。
 
   
 
   
7月3日

らしさと思っておこるのはやめたが

   
  (これは7月1日のおはなし)
 
   小学校は今日こそが本当に終業式だという。
 
   “お迎えにいくのは11時半ごろになるからね”
 
   “うん!”
 
   前日の朝とほぼ同じような言葉を交わし、
 
   でも、
 
   前日にあのような間違いをしたからこそ、今日への確信は200%だ。
 
   妙に自信ありげな下の息子と、もう問題は起こるはずなしと安心しきったわたしは
 
   バス停で別れた。
 
   2時間授業だったので、途中1時間たったところで一休み。。
 
   習慣的に携帯の着信暦を見ると、ショートメール、、、まったくこんな朝から来るのはどうせくだらん宣伝メールだ。
   
   
   「おばちゃん、小学校へ迎えに行かなくてもいいよ。ムーちゃんかばん取りに帰ってきた。で、今日もう学校行かないって」
 
   ・・・・目が点。
 
   それは、ちょうど休みでわたしの家に遊びに来ていた友人の息子さんからのメールだった。
 
   ちょっと待て。。いくら終業式が早く終わってもこんなに早く終わるはずはない。
 
   かばん取りに帰ってきた??・・ならなぜまた学校へ戻らない?
 
   あわてて自宅に電話を入れて事情聴取。。
 
   電話口から蚊の鳴くような声が聞こえてきた。
 
   “学校の門のとこまで行ったら、みんなかばん背負って来てて、僕だけ手ぶらで・・・。だから門入らないでかばん取りに帰った。。”
 
   “は?”
 
   さすがわが息子。またしても、事をしでかしてくれたり。。
 
   “じゃ、なんで早く学校戻らないの?だいたい、終業式なんだから、かばんなくたって大丈夫でしょ。”
 
   “でも、みんなかばん持ってきてたんだもん。行っても授業ないもん。お話しておわりだもん”
 
   “じゃあ、通信簿はどうするの?来学期からは日本へ転校なのに、さよならもしないで終わりですかぁ?今すぐ学校行きなさ~い!”
 
   “うぅぅ~~ん”
 
   この子のこの“うぅぅ~~ん”は、“いやだ”という意味だ。
 
   “うぅぅ~~んは要りません!今すぐ行きなさい!行かないと日本連れてかないぞ!11時半に迎えに行きますからね。”
 
   “・・・・・うん。”
 
   
   確かに朝、この子は手ぶらで学校へ行った。“終業式だから授業も何もないんだよぉ”と得意そうにのたまわっていたではないか。。
 
   わたしが迎えに行った時、担任の先生も“かばんなくても大丈夫だったのにねぇ”と苦笑いである。
 
   自分だけかばんを持っていなかったことが余程ショックだったのだろう。。
 
   怒られると思ったのか。
 
   恥ずかしいと思ったのか。
 
 
   この子の感覚は親のわたしでもびっくりさせられる。
 
   普通に恥ずかしいと感じてほしいところで、ケタケタ笑っていたりする・・と思えば、
 
   今日のようにどうでもいいところで、深刻になったりする。
 
   おいおい。。お前らしいといえばそうだけど、大人になってもこれじゃ許されんぞ!
 
   
 
     
7月1日

らしさと考えて怒るのはやめた

 
  小学校は今日は終業式だという。
 
  中国は夏休みが早く来るのだ。
 
  終業式は半日だから、昼前には迎えに行かなければならないと、
 
  “ママは11時ごろ行くからね”
 
  “うん!”
 
  朝7時半のバス停で下の子と別れた。
 
  1時間だけの授業を済まし、10時半前職場を出て、
 
  バスの乗り換えはいつになくスムーズ、万事順調・・・・・と思われた。
 
  ふと思い立ち携帯の着信チェックをすると、9時前に自宅近くと思われるが、誰からかわからない着信暦がある。
 
  こちらからかけかえすとなんと、団地内の売店のおじさんの声だった。
 
  “これねぇ、公衆電話だよ”
 
  おじさんとは結構仲がいいが、電話の主がわたしだとは気付かなかったらしい。
 
  9時前に団地の公衆電話から私に電話してくるって、、、いったいだれだ?
 
  小学校の校門の前まで来ると、やけにひっそりと静まり返っていた。。。
 
  謎の電話の主はこれで解明された。。。
 
  門番さんはわたしの姿を見るや出てきて言った。
 
  “あんたの息子さぁ、あさ、はやぁ~く来たけどさ、終業式は明日なんだよねぇ。。。”
 
  “・・・・・・・・・・・・”
 
  うちの子はそのままっすぐ家へ帰ったらしい。
 
  しかしどうやって帰ったかはわからん。。。数週間前定期をなくした彼は帰りのバス代は持っていなかったはずである。
 
  わたしが迎えに来るということで家の鍵も持っていなかった彼は、団地の売店の公衆電話から私に電話をしたのだった。
 
  結局私が帰るまで、午前まるまる締め出しを食らった状態だったのだが。
 
  アパートの階段をあがると、息子の第一声はその文句にそぐわないほど明るかった。
 
  “ああ、もう、僕待ちくたびれちゃったよぉ”
 
  あたりまえじゃ、わたしのせいじゃないぞ。。。。
 
  
 
  こどもはみんなそれぞれ性格性質がちがう。
 
  そんなこと大人だって同じだし、わかりきったことだけど。
 
  うちのはかなり来てるぞ。
 
  なんで終業式の日をまちがえるんだ。
 
  1年生でもあるまいし。
 
  しかしまあ。
 
  らしいといえば、彼らしい。。
 
  彼の子供時代にまた一つエピソードが増えたと思って覚えておこう。
 
  将来、このネタで笑ってやるぞ。。覚悟しとけぇ~!